杉野先生の教え  武藤 嵩

日本学生海外移住連盟の実習調査団派遣は杉野先生の農業拓殖哲学に基いた海外移住論に端を発しております。

 先生の拓殖哲学は30年来の研究と、農大に農業拓殖学科が創立され学科長に就かれてからのボルネオ島、東南アジア八ヵ国、南米など数回の視察調査旅行を重ねて確信を固めた人生観です。それは世界を二つに裂いている共産主義を国是としている諸国と自由主義を防衛している諸国、この二つのイデオロギ-を超えた次元に立つ勇気をもって国際協力によるフロンティアの開拓によって一歩一歩事実を積み重ねて説得力を強化するには、農業拓殖活動を基底とせねばならない、人類の過去一切の闘争は飢餓および飢饉の恐怖から発すると言う歴史の結果に立脚するからであると申しております。そして、長期にせよ、短期にせよ、またその活動が内地にせよ、外地にせよさらにその職域が農業にせよ、非農業にせよ世界を繋ぐ輪の最も強い役目をあらゆる職域から支える事を絶対必要と確信しておられます。

 杉野先生の教育方針は実習に重点を置いて実践的訓練を施すことに重大な特色を有しております。自らが修練農場においては先頭に立って作業なしておられました。
 学移連の実習調査団派遣の根本的な目標は 若人が世界のフロンティアに赴いて、その第一線で働いている人々に身を投じて苦楽を共にして、そこに現われているフロンティアスピリットにインスパィアされ共に闘い抜く心身の訓練 とのべておられます。年度がかさなり派遣部門が拡大されても根本的な趣旨は変わらず、たとえ開拓部門でなくて職種が違っても第一線での真剣な労働以外にフロンティアスピリットとそれを闘い抜く心身の力を養う道はありませんと結ばれおります。

 そして先生は我々の夏季合宿への激励文として「私は諸君に皆開拓農業者になれと言っているのではありません。医者にも、工業家にもその他実業家にも、学者にも教師にもなってもらいたい、それぞれ必要な人材であり職域です。そのために各々の専門の学校に学んでいるわけです。しかし世界の辺境開拓者と血の通った学者になり、医者になり教師になり実業家あるいは政治家等になってほしいのです。そのために学生時代の一年位このような辺境生活で心身を鍛錬し人生観をもう一度反省することは大事ではないかと思うのです」
「連盟活動を通してワークして討論しあって親睦をはかるのも大切です、一番大切なの事は実習生活適格性の啓培発見です。これが私の信念です」と最後に述べておられます。

 上述のように私たちの学移連活動を省みる時、杉野先生のお言葉無くして語ることは出来ません。
大学を卒業してすぐ海外に出てもう相当の年月が過ぎておりますが、先生農業拓殖論は常に私の胸の中に生きておりす。1995年8月に東京農業大学の当時の学長松田先生がパラグァイにご来訪なされた時イグアス移住地の拓殖科のOB久保田農場で先生の30回忌の法要を行い私は部外者ではありましたが参列させていただきました。

  当時の主な行事は実習調査の派遣と夏期合宿でした。そしてわれわれの活動を側面的にご支援くださった方々を思い出せば、杉野先生の他に日大の後藤先生、派遣団の資金として、自民党の代議士田中龍夫先生や、社会党の田原春男先生が外務省に働きかけていただき国家予算に計上してもらいました。さらに経団連の専務理事でした花村仁八郎先生が各業界の連合会に推薦状を出していただきご協力してくれました。個人的に家族会連合会の事務局長藤川辰夫氏にもお世話になりました。

 このように皆さんに助けられて実習調査団派遣が出来たのは、調査団が学移連の杉野哲学の実践部隊とご理解いただいたからとおもいます。一方夏期合宿ではワークと共に昼夜を問はず各部門から派遣の意義、移住の意義を討論して夢を語り合いました。当時は参加大学が60校近かったとおもいます。

 エピソードとして
 ・本部役員が約束の時間に本部にこなかったので、彼に家に電話をしてすごく叱ったら、私は父ですとこたえられて赤面もいいところ、なんと弁解したか忘れました。

 ・大手銀行の係長が、学移連は国家予算を受けているている団体で資金的に余裕があると見えたのか、役員を夕食に誘っていただきました。口座を開いてすぐ閉めたのでは…。

 ・田中龍夫先生のご招待で本部役員全員をクリスマスパーティ-に呼んでいただき、生まれて初めて七面鳥なるものをいただきました。

 ・私たちの代の合宿は六甲山地でしたが、あの時の記念植樹はおおきくなったろうか。どなたがお世話してきてくれたろうか。

 紹介が後になりましたが、私は学移連第10期の責任者として上述の先生方にもまして先輩や役員、および会員の皆様方のご協力のもとに最も大切な時期を移住連盟運動に夢中になったことは幸せだったと思っております。一昨年11月にサンパウロで行った50周年際のとき話が出ましたが、学移連の後継組織とも言いますか 「国際夢ネット21(kyn21)」が、杉野先生の「世界の辺境開拓者との血の通った者になってほしい」と言う基本的な考えを持つ人材育成機関に育てられたらいいのではないかと思います。

 

 
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