日系人という友人

                                                                              眞砂 睦

 
 11月9日付読売新聞に、リオデジャネイロ支局長による「日系人という財産」と題するコラムが掲載された。支局長と中国の外交官との酒の席で、中南米での日中両国の存在感が話題となったそうだが、その話のなかで「ブラジルでも中国の存在感が急速に高まっているが」と水を向けたら、外交官は「ブラジルでも最大の貿易相手国は中国だが、日本には日系人が積み上げた信頼感という財産がある」と言ったとある。
 中国は世界各地で反日宣伝をくり広げているが、なぜかブラジルでは抑制的だそうだ。支局長は「日系人が築き上げた日本への厚い信頼を寄せているブラジルでの反日宣伝は逆効果だと判断しているのだろう」と述べている。同感だ。宣伝戦に長けている中国共産党といえども、移住した25万の日本人とその子孫が100年かけて築き上げた日伯の信頼関係はそう簡単には崩せないだろう。
 私たちはこれまで同じ顔をして日本語が理解できる日系人を、日伯の間をとりもってくれる仲介者だと思いこんで、時には身勝手なお願いをすることもあった。私自身、ブラジル企業との合弁事業に従事していた時、意図することを相手に的確に伝えられず、同僚の2世の方に意思疎通を助けてもらったことが何度もある。日本流の考え方をブラジル人の論理に組み立てて、ていねいに説明してもらったおかげで、どれほど相互理解を深められたことか。日本人をよく知らないとこうした仲介はできない。日系人が日伯の「かすがい」になってくれていることを、私は身をもって体験した。
 しかし日系人はブラジル人である。世代が進むにつれて混血も進んでいる。これから先も日本人の心情や考え方を理解してもらえるかどうかは未知数だ。だんだん日本から遠のいていく日系人とのつながりをどのように育んでいくか。中国の反日工作を持ち出すまでもなく、私たちにつきつけられている課題である。
 今年8月の安倍首相の訪伯を機に、国は日系社会との関係を再構築するために、日本語教師などの派遣や日系の若者を日本に招く制度を拡充する方針を出した。的確な施策だ。同時に、私たち個々人も「草の根レベル」でのつながりを深める努力が欠かせない。
 和歌山は有数の移民送出県。現地には多くの県出身移住者が活躍しており、立派な2世や3世も育っている。そうした身近な方々との交流を深めることが、先人が積み上げた「日系人という財産」を確かなものにする出発点と受けとめている。    (了) (2014.12.19掲載)

    

 
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